遺伝子テストサービス (いわゆるDTC) 各社の簡単なまとめ

 海外で遺伝子テストサービスの是非について議論沸騰しているけど、空気読まずに各社紹介とかやっちゃうよ!

背景

 前回 Pathway Genomics社の遺伝子テストサービスを受けてみた - つぶやき〜 を書いてみたのは、個人的には万人にお勧めはできないですよー、と自分なりに声をあげるのが目的の一つだった。いまのところ日本人が万全のサポートを受けれない状況もあるし。なのでオッズ比やらGWASやらも全然説明する気がないエントリーになっていて、分かる人で興味があれば受ければ良いよね、という立ち位置で書いてる。不親切ですまん。。でも実際に ゲノムを解析したら、どんな病気になりそうか知ってしまった... | ギズモード・ジャパン みたいな後味の悪い話もあるしね。
 ただ個人的には、理解できる人で興味ある人は受けたらいいよ、という考えがあるので、各社を少し紹介してみよう!、というのがこのエントリーなわけです。

さっそく deCODEme / 23andMe / Pathway Genomics / Navigenics 各社を紹介するなど

deCODEme

http://www.decodeme.com/
アイスランドdeCODE社が提供しているdeCODEme。
Complete editionで2000ドル (!) で、タイピングするマーカー数は最も多い (およそ100万SNPs)。
情報発信用ブログはこちら http://www.decodeyou.com/
自分の遺伝子型データを一括ダウンロード可能。


 私見だけど、deCODEmeが一番アカデミックな感じがする。いい意味で堅いとか真面目と言い換えてもいい。これは母体がdeCODE genetics社だからというのもあるし、Kari Stefansson博士の存在が大きい。彼はNatureなどで自分なりのPerspectiveを述べていたりするのをたまに見かけるが、その意見は実直ですごく好感が持てる。と思ったら3月くらいに一度取り上げていた。

Personalized genomic information: preparing for the future of genetic medicine - つぶやき〜

 deCODE genetics社はざっと見る限り130の疾患遺伝子解析を報告しており、この領域で最高レベルの学術誌である Nature genetics 掲載もゴロゴロある。

 これに加えて deCODEhealthという医療側と患者側の間に収まるサービスも始めているようで、こちらも興味深い *1

23andMe

http://23andme.com/
アメリカのマウンテンビューでスタートした会社。Google資本が入っていることでも有名。こちらはアカデミックというより柔らかい感じがあって、ユーザーのコミュニティ作りにも力をいれている。
Complete editionが499ドルで、タイピングするマーカー数は50-60万SNPs
情報発信用ブログはこちら 23andMe Blog - Welcome to The World of Genetics
自分の遺伝子型データを一括ダウンロード可能。
困ったことに日本から直接オーダー出来ない…*2


 ブログやTwitterアカウント(@23andme)が非常に活発で他社より目立つ。また特筆すべき活動として23andWeがある。これはWeb上でアンケート形式でユーザーから表現型情報 (例えば、指を組んだら左右どちらが上になるか、とか背中毛は濃いですか?とか) を回収し、関連する遺伝子座位を特定しようというおもしろい試み。http://www.mol-dx.net/2010/06/post-11.html で紹介してあるし、興味があれば論文自体がPLoS geneticsでオープンアクセスなのでどうぞ!
Web-Based, Participant-Driven Studies Yield Novel Genetic Associations for Common Traits

 これに感動して自分もいくつかつぶやいていたりした。

Pathway Genomics

http://www.pathway.com/

 前回のエントリーで取り上げた会社 Pathway Genomics社の遺伝子テストサービスを受けてみた - つぶやき〜
Complete editionで450ドルで、タイピングするマーカー数は公開されてない。
情報発信用ブログはこちら http://blog.pathway.com/
自分の遺伝子型データを一括ダウンロードは出来ない。


 最初の2社に較べると、アカデミックで名前が売れてるわけでもないし、日本でニュースにならないこともあって知名度は劣ると思う。でも会社としては真面目で、訳の分からない遺伝子検査、ではない。遺伝カウンセリングを受けられる体制もきちんと取っている。州の認可なども最初から真面目にやっていたっぽい。

Navigenics

http://www.navigenics.com/
 あとはNavigenicsが有名だと思うんだけど、これは受けられる人が限られている (契約してる会社の従業員とか) のでよく知らない。。

なんとなくまとめると

 deCODEmeのサイト内にあるものだけど、各社比較のデータはこちら。
http://www.decodeme.com/product-comparison
だしておいてなんだけど、現状のDTCやGWASからのリスク推定の性能を考えると、そう大きな差が生まれる基盤はあんまりないよな…。

 コストの話をすると、割引クーポンがたまにあるようなので利用すると安くなる。実際僕のケースではPathway Genomicsが2.2万円だった。23andMeはクーポンではないけど3万円で入手したし。


 完全に僕の好みでいうと、

  • deCODEme -> 高いけど、DTC遺伝子テストサービスの最高峰。でも高い。。
  • 23andMe -> 活動がおもしろいのでお勧め。購入方法はなんとかして。
  • Pathway Genomics -> 価格もべらぼうに高くないので体験してみたい!、とかに良いかと。

結果出るのに6週間くらいかかるけど、夏休みの自由研究的な気持ちでどうでしょう。

*1:http://www.tobyo.jp/tobyoblog/ さんでよく見かけるHealth2.0をイメージするんだけど合っているだろうか?

*2:Amazonの個人出品は異様に高いのでお勧めしない…