まだ玉石混淆の遺伝子検査
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100813-OYT1T01215.htm
がんやアルツハイマー病のリスクが分かるとするものや、子供の「才能」が分かるとうたうものまである。ただ、科学的根拠は必ずしも明確でなかったり、説明が十分でなかったりするものも多く、日本人類遺伝学会や専門医らは「利用者に大きな誤解と不安を与える恐れがある」「遺伝情報は血縁者にも影響を与える重大な個人情報。専門家のカウンセリングなしの検査は危険」と警鐘を鳴らしている。
記事の内容にはほぼ同意…ただこの記事の発端になっているのはまさに現在アメリカで沸騰中のFDA vs (2007年以降に登場した怪しくない) 遺伝子テストサービス会社のマジメで手探りな遺伝と社会のせめぎ合う議論なのだと思われるのに、そこには触れられてないのが残念…*1。
ということで遺伝子テストに興味を持ってる専門家の端くれが好き勝手につぶやいたのがこちら。「才能判定?手軽な遺伝子検査、科学的根拠は… 」でちょっと言いたい - Togetter
今の最先端の遺伝子テストって決して怪しいものじゃない。ちゃんと扱えるようになれば人の役に立つから見守ってほしいというのが今の僕の願いです。<追記>
臨床遺伝カンファレンスで医師相手にトークさせて頂いた時のスライドはこちら。他サイトのキャプチャ画像などは大人の事情で削除していて伏字もあるし見づらいですが、最先端DTC遺伝子テストは怪しいものではない、サポート体制とリテラシー向上があれば正しくメリットを享受できるのでは?、と話してみました。
ちなみに頂いた質問や感想などせっかくだから列挙。
- 結果を聞いて自殺した人は過去にあったのでしょうか?
- FDAはなんでずっと放置していたんだろうね
- 結果を医師がフォローする体制になっているのか?
- 生命保険に損得が出て来る
- 匿名で受けることで、生命保険で不正を働ける
- 誰か別の人の唾液を送れるか?
- パートナーと同じ遺伝子に変異があったと分かっているなら、カウンセリングもできる (これは通常だと第一子が生まれて初めて分かるケースに近いから、という意味らしい)
- アメリカでのルーツ探しの話があったが、逆にそれが民族的な疾患のなりやすさにつながり、差別を生む可能性があるのではないか?
- 他人の検体で実施できてしまう可能性があるのではないか?
- 匿名で実施できるのかどうか?また、逆にクレジットカードなどで個人が特定できる可能性は?
- 保険契約で不利になったりする事はあるのでしょうか?
- 検体受付の年齢制限はあるのでしょうか?
- 2種類の会社に出した検査結果で違いはあったのでしょうか? (ジェノタイピングの精度は? という意味だったらしい)
- 何年か後に実際にかかった病気のリサーチなどはあるのでしょうか?
- 寝てる人はいなかった。
- 下を向いてる人もいなかった。
- みんな興味深く聞いていたと思う。
- 中には実際の症例についての話を聞きたかった人もいるのかもしれないけれど、それは説明が単純明快な結果、もの足りなさを感じたせいだと思うので、とてもわかりやすくて良い発表だったと思う。
- 症例発表聞きたかった人でも、家に帰って家族や子供に話すネタとなって良かったと思う。
- 年配の女医さんが、何度も頷きながら聞き入っていた。
- 波平さんを医者でも知っているんだなと感動した。
*1:記事の容量とか狙いもあるだろうし、しょうがないけど