Pathway Genomics社の遺伝子テストサービスを受けてみた

結論から言うと、現状の遺伝子テストサービスは

  • 疾患に関する遺伝研究の知識、または強い好奇心を持つ科学者
  • 遺伝に興味のある医者

というような人以外には勧められない。
僕が個人的に勧めないってだけなんだけど、実際に自分で体験してみてそう考えた。このエントリーは誰にでも分かるように親切には書いていない。ほとんど意味が分からないなぁという人は今はまだ利用しない方がいい、という判断材料にしてもらえると嬉しいです。

注意書き

この記事を読むと日本語であまり紹介されていない遺伝子テストサービスが実際どういうものか、ちょっと分かります。
ただ最初にお断り2つほど。もったいつけてすまんね。

1. このエントリーについてはCCではないです。
無断で僕の遺伝情報が分かる内容を何かのスライドに使うなどしないで下さい。
遺伝情報を直接引用でなければ、その他の引用・言及はしてもらって構いません。


2. 1に書いたように僅かですが僕の遺伝情報が公開されています。
そういった目的は持っていませんが、読み手次第で不愉快になるなどあるかもしれません。あなた自身の判断で読み進めてください。

ということで、レッツゴー。

遺伝子テストサービスとは何か

遺伝子"テスト"サービスとは、あなたのゲノム、つまりDNAを調べるもの。特定の薬に対する反応性、特定の疾患に関わることが知られている遺伝子だけに限定して調べる。注意したいのが、"テスト"であって"診断"サービスではないということ。
この6月くらいにPathway Genomics社がWallgreenというドラッグストアに、この"テスト"キットを置いて販売網を拡げようとしたところ、FDAからストップがかかった。現在これらDTC (Direct To Consumers) 製品を販売する会社らの出方を待っている*1。ちなみに、ほとんどの会社は2009年くらいから、カウンセリングできる医者を紹介できる体制を取っている。
各社の簡単な紹介記事もかいてみた => 遺伝子テストサービス (いわゆるDTC) 各社の簡単なまとめ - つぶやき〜

僕の結果、僕の遺伝情報をいくつか見てみよう


PPARgがイイ感じのOdds ratio (オッズ比) を示している。
でもこれはしょうがない。だって日本人の90%くらいがC/Cなのだから。だから僕がC/Cでも悲観する必要はない。これはむしろ残りの10%くらいの人たちが幸運にもリスクを下げる遺伝子型だと表記すべきだよ。


これはAPOE4がないということを表している。正直に告白すると、この結果には胸を撫で下ろした。このSNPは他に比べて例外的に効果が強いからだ。その意味が少しは分かるだけに結果が出る前、このテストを受けたのはあまりに安易だったかな、とちらっと後悔したことも白状しておく。

まとめのようなもの

  • どうして受けようと思ったのか?

好奇心。自分 (の遺伝子) について知りたい、はごく自然なことなんだ*2
それにいずれ遺伝情報が医療の現場や社会に、そこにあるべきものとして普通に存在するようになるだろう。これはちょっとした予行演習や未来の先取りみたいなもんだ。

  • ねえ今どんな気持ち?どんな気持ち?

好奇心という観点からすれば -残念なことに- 当初の目論見は外れて大きい動揺はなかった。でも収穫はあった。実際に体験してみるというのは、やっぱり違う。頭では分かっていた。まず大したことにはならない、と。しかしいざ結果が見れる状態になったとき、結果によっては遺伝的に近い姉妹へ時間をかけて説明しようと考え始めてた。自分の遺伝情報は自分にだけ影響があるものではない。その意味を少しだけど感じ取れた。


今回のテストで悪い結果だったとしても、別に悲観しなくてもいい。いいんだけど、それを理解するには科学知識がいる。ここで出て来た遺伝的要因よりもライフスタイルの改善の方がよほど大きな効果を表すものがほとんど (もしくはすべて) だ。けれども、科学者でない人が一人で理解できるのかな?サポートする体制があるか?、というと現状かなり疑問だろう。これが全ての人には今のタイミングでオススメは出来ない、という理由になる。

変化は起きるものだけれども、リテラシー不足・体制不備のために科学が人を不幸にするのを見たくはないよ。社会と遺伝が良い関係を築けるように何か貢献する責任も感じる。いや、そんな立派なことが出来る人間ではないのだけれど、ほら一応科学者だし(キリッ


あとGoogleファウンダーのSergey Brin氏のポジティブな意見表明も引用しておこう。*3

I know early in my life something I am substantially predisposed to,” Brin wrote. “I now have the opportunity to adjust my life to reduce those odds (e.g., there is evidence that exercise may be protective against Parkinson’s). I also have the opportunity to perform and support research into this disease long before it may affect me. And, regardless of my own health, it can help my family members as well as others.


最後にこの遺伝子テストを受けた結果を短くまとめると「(超訳) 遺伝的に問題は見つからなかったけど、もっと運動の習慣つけろ。健康にいいぞ。」だった。
良いテストだな、それはとても正しい指摘だと思うよw
最初からお勧めしないとかいうツカミをしたわけだけど、僕自身はこういった機会が持てたことを楽しんだし、感謝している。将来こういったことが他の人にも拡がれば良いとも考えている。最後まで読んでくれてありがとう。

*1:書いてから放置していたので、現在では絶賛議論中

*2:科学者やってるくらいだから、ね。

*3:Brin氏の記事は23andMeのブログで読める http://spittoon.23andme.com/2008/09/18/google-co-founder-blogs-about-23andme-data-parkinsons-risk/