「ヒトの変異 人体の遺伝的多様性について」を読んだ

ヒトの変異体を豊富な資料と、それらを追求した科学者のことも含めて記載した一般書。
良書だったし、最後らへんにあった「ただ知りたい」という欲求に共感したのでメモして残しておく。

遺伝的な相違はあらゆる人々の間に存在する。ではどのような相違があるのかを、私たちは見つけだすべきなのだろうか? 多くの科学者の答えは「ノー」だ。人間の集団間に存在するこのような肉体的な多様性は、単に「おもしろくない」ー研究に値しないと言って退ける者も入れば、おもしろいかもしれないが、それを取り上げようと考えるだけでも社会的な不正をもたらすので研究すべきではない、と主張する者もいる。彼らは、人種についての科学だけでなく、人種主義的科学が復活するのを恐れている。
だが私は、人間の多様性を生む遺伝子についてぜひとも知りたい。同じ村に住んでいる男女の間や、相手の大陸に足を踏み入れたことがない人たちの間に違いを生む遺伝子について知りたい。その理由の一部は、ただ単に知る喜びを味わいたいからだ。これは、イギリスの画家・詩人であるダンテ・ガブリエル・ロセッティ(1828-82)の絵画「ラ・ギルタンダータ」を見て、モデルのアレクサ・ワイルディングの赤毛があのように見事なのは、MC1R遺伝子が二個欠損しているからだ、とわかるのが嬉しいのと同じだ。この知る喜びはあらゆる科学から得られるものだが、この場合はさらに、これまでよく知られていたことなのに、まったくの不思議であったことがはっきり理解できたときの喜びも加わる。

前半に書いてあるようなリスク、分かるんだけど。
なんで違うか知りたいのよ。そういう欲求なの。

ヒトの変異―人体の遺伝的多様性について

ヒトの変異―人体の遺伝的多様性について